「将来のために、エンジニアになりたい」
「でも、プログラミングなんて未経験だし、ついていけるか不安…」
「年収が下がって、生活ができなくなるのだけは避けたい…」
もしあなたが今、キャリアチェンジへの希望と、「失敗したくない」という現実的な恐怖の間で揺れ動いているなら。 この記事は、あなたのための「第三の選択肢」を提案するものです。
こんにちは。このブログを運営している酒井です。 私自身、かつては営業職として働きながら、「手に職をつけたい」と悩み、試行錯誤の末にエンジニアへと転身しました。
その経験から断言できるのは、「営業からいきなりエンジニア(開発職)を目指す」ことだけが、正解ではないということです。 むしろ、いきなり崖から飛び降りるようなリスクを取らずとも、あなたの「営業経験」を活かしながら、安全に、かつ確実にITスキルを身につけられる「黄金のルート」が存在します。
それが、今回ご紹介する「セールスエンジニア(技術営業)」というキャリアです。
この記事では、
- セールスエンジニアとは、一体何をする仕事なのか?
- 一般的な営業とは、具体的に何が違うのか?
- なぜ、エンジニアを目指す人こそ、一度この職種を経験すべきなのか?
について、私の実体験とIT業界のリアルな事情を交えて、徹底的に解説します。 この記事を読み終える頃には、あなたは「無理な挑戦」ではなく、「勝算のある戦略」を手に入れているはずです。
そもそも「セールスエンジニア」とは?
まず、言葉の定義からハッキリさせましょう。 セールスエンジニア(Sales Engineer)とは、文字通り「セールス(営業)」と「エンジニア(技術者)」の両方の役割を併せ持つ職種です。 企業によっては「プリセールス」や「技術営業」と呼ばれることもあります。
一言で言えば、「スーツを着た技術者」であり、「技術が分かる営業」です。
どんな立ち位置なのか?
一般的なIT企業の商談プロセスを想像してみてください。
- 営業担当: 「御社の課題には、当社のクラウドサービスが最適です!コストも削減できます!」(熱意とメリット訴求)
- 顧客(情シス担当): 「なるほど。でも、既存のセキュリティシステムとの連携はどうなるの? APIの仕様は? 導入時のデータ移行手順は?」
- 営業担当: 「えっ…と、確認します…(汗)」
ここで登場するのが、セールスエンジニアです。
- セールスエンジニア: 「その点については、私が補足します。御社の現行システムであれば、このモジュールを使うことでシームレスに連携可能です。データ移行については、このようなスクリプトを用意しておりまして…」
- 顧客: 「おお、なるほど!それなら安心だね」
このように、営業だけでは答えられない技術的な課題を解決し、顧客に「技術的な安心感」を与え、受注を確実なものにする。 それが、セールスエンジニアのミッションです。
「営業」と「セールスエンジニア」の決定的な3つの違い
「それって、詳しい営業マンと何が違うの?」 そう思うかもしれません。しかし、両者は「見ている世界」と「求められるスキル」が明確に異なります。
違い①:売るのは「夢」か、「現実」か
- 営業(Sales):
顧客に「夢(ベネフィット)」を売るのが仕事です。「これを導入すれば、御社の売上が上がります!」「業務がこんなに楽になります!」と、未来の価値を訴求し、顧客の感情を動かして契約を勝ち取ります。 - セールスエンジニア:
その夢が「現実(実現可能性)」であることを証明するのが仕事です。「技術的に本当に可能なのか?」「リスクはないのか?」「スケジュールに無理はないか?」を論理的に説明し、顧客の理性に訴えかけて信頼を勝ち取ります。
違い②:武器は「人間力」か、「技術力」か
- 営業:
コミュニケーション能力、関係構築力、クロージング力といった「人間力」が最大の武器です。顧客の懐に入り込み、決裁者を口説き落とす泥臭さが求められます。 - セールスエンジニア:
もちろんコミュニケーションも大事ですが、最大の武器は「技術知識」です。製品の仕様、競合製品との技術的な違い、導入後の運用フローなど、専門知識に基づいた回答ができなければ、存在意義がありません。
違い③:ゴールは「受注」か、「成功」か
- 営業:
多くの場合、最大のゴール(KPI)は「受注数字(売上)」です。契約書にハンコをもらった瞬間が、最高のハイライトです。 - セールスエンジニア:
受注も大切ですが、それ以上に「導入後の成功(トラブルなく稼働すること)」を見据えています。「売れればいい」といって無理な提案をすると、後で技術的なトラブルになり、自分たちが苦しむことを知っているからです。そのため、時には営業の暴走を止める「ブレーキ役」にもなります。
セールスエンジニアの具体的な仕事内容
では、具体的にどんな業務を行うのでしょうか? 「コードを書くの?」と不安になるかもしれませんが、バリバリ開発することは稀です。
- 商談への同行・デモンストレーション:
営業と一緒に顧客を訪問し、製品のデモ画面を見せたり、技術的な質疑応答を行います。 - 提案書・見積書の作成支援:
営業が作る提案書のうち、システム構成図や技術要件の部分を作成します。 - RFP(提案依頼書)への回答:
顧客から送られてくる「こんな機能はあるか?セキュリティ基準は満たしているか?」という何百項目もの質問リストに、技術的根拠を持って回答します。 - 導入支援・PoC(概念実証):
契約前のお試し期間(PoC)に、顧客の環境で実際に製品を動かしてみて、問題がないか検証するサポートを行います。
4. あなたはどっち?向いている人・向いていない人
この仕事は、非常に市場価値が高いですが、向き不向きもハッキリしています。
向いている人(ハイブリッド人材の素質あり)
- 「なぜ?」を深掘りするのが好きな人:
「この機能はどう動いているんだろう?」「なぜこのエラーが出たんだろう?」と、仕組みに興味を持てる人。 - 「説明」が得意な人:
難しい専門用語を、ITに詳しくない人にも分かるように「翻訳」して伝えることに喜びを感じる人。 - 「困っている人を助けたい」人:
自分が主役になってガツガツ売るよりも、営業や顧客をサポートし、感謝されることにやりがいを感じる人。
向いていない人
- 「とにかく数字!結果が全て!」な生粋のハンター:
技術的な裏付けや細かい確認作業を「面倒くさい」と感じる人は、ストレスが溜まります。 - 「勉強」が嫌いな人:
IT技術は日進月歩です。常に新しい製品知識や技術トレンドをキャッチアップし続ける姿勢がないと、半年で知識が陳腐化します。 - 「人と話さず、黙々と作業したい」人:
エンジニアといえど、仕事の相手は「人」です。一日中誰とも話さずにコードを書きたい、という人は、開発職を目指すべきです。
いきなりエンジニアが不安なら、「技術営業」もあり!
ここからが、この記事で私が伝えたい「戦略」の話です。
もしあなたが、営業からエンジニアへの転身を考えていて、 「未経験で通用するか不安だ」 「年収が下がるのが怖い」 と思っているなら。
「まずは、セールスエンジニア(技術営業)に転職するのもあり」です。
理由は3つあります。
理由①:年収を下げずに「ITの世界」に入れる
未経験で開発エンジニアに転職すると、どうしても最初は年収が下がります(レベル1からのスタートだからです)。 しかし、セールスエンジニアなら、あなたの「営業経験(折衝能力、プレゼン力)」を即戦力として評価してもらえます。 つまり、「営業スキル」という資産を担保に、年収を維持(あるいはアップ)させながら、IT業界に潜り込むことができるのです。
理由②:働きながら「技術」を盗める
セールスエンジニアになれば、嫌でも毎日、技術に触れることになります。 社内の開発エンジニアと会話をし、製品の仕様書を読み込み、顧客の技術的な質問に答える。 この環境は、独学でプログラミングを勉強するより、100倍濃密な「実戦的なIT学習」の場です。 給料をもらいながら、エンジニアになるための予備校に通っているようなものです。
理由③:その後のキャリアが「無双」状態になる
数年、セールスエンジニアとして経験を積んだ後のあなたを想像してみてください。
- 顧客の心が分かる(元営業)
- 技術的な会話ができる(セールスエンジニア経験)
この2つを兼ね備えた人材は、IT業界で「最強」です。 そのままセールスエンジニアのスペシャリストとして年収1000万を目指すもよし。 技術への理解を深めた上で、満を持してフルスタックエンジニアやプロジェクトマネージャーに転身するもよし。 あるいは、私のようにITコンサルタントとして独立するもよし。
どの道を選んでも、「技術しか分からないエンジニア」や「売ることしかできない営業」には絶対に勝てない、希少な人材になっています。
具体的な求人
Indeedにて「セールスエンジニア」で検索すると、3000以上の求人が表示されます。
具体的にどんな求人がでているか確認してみてください。
中にはITエンジニアではなく、機械/設備エンジニアの求人も含まれているためご注意ください。
まとめ:遠回りに見えて、それが「最短ルート」かもしれない
「営業 から エンジニア」への道は、一つではありません。 プログラミングスクールに通って、いきなり開発者を目指すのも一つの道ですが、それは険しい山道です。
セールスエンジニアという職種は、あなたの「営業」という武器を捨てずに、安全に、確実に「エンジニア」の領域へと足を踏み入れるための、有効な戦略です。
「自分には技術がないから…」と諦める前に。 まずは、あなたの得意な「話すこと」「提案すること」を武器に、ITの世界へ飛び込んでみませんか?
その一歩が、あなたの市場価値を劇的に高める、キャリアの分岐点になるはずです。
▼「じゃあ、具体的にどんなスキルが必要?」と思ったら
セールスエンジニアや、私が推奨する「M365エンジニア」に必要なスキルセットについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
