「営業からエンジニアへの転職理由って、なんて言えばいいんだろう…」
もしあなたが今、キャリアチェンジを決意し、履歴書を前に固まっているなら。 その悩みは、あなたの未来を切り拓く、最も重要な問いです。
多くの人が、転職理由を「ノルマが辛かったから」「営業が向いていなかったから」といった、感情的な「逃げ」として捉えがちです。
しかし、この記事でお伝えしたいのは、全く逆の視点です。 現代において、営業職からエンジニアへのキャリアチェンジは、データと市場の傾向に基づいた、極めて合理的で「戦略的な進化」であるという事実です。
こんにちは。このブログを運営している酒井です。 私自身も、大手通信会社でIT営業を経験した後、社内異動でエンジニアに転身し、最終的に独立(年収は会社員時代の3倍になりました)というキャリアを歩んできました。
私の体験談は、あくまで一つの事例に過ぎません。 この記事では、私の経験は3割程度に留め、残りの7割は、世の中の客観的なデータや市場の傾向に基づき、あなたが「営業からエンジニア」という道を選ぶべきか、その判断材料をフラットに提供します。
第1章:なぜ、今「営業」のキャリアが見直されているのか?(プッシュ要因)

まず、なぜ多くの営業職が「転職」を考えるのか。その背景にある、市場全体の「プッシュ要因(押し出す力)」を客観的に見ていきましょう。
1. テクノロジーの進化と「営業」の役割変化
近年、CRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援ツール)、そしてAIの進化は、従来の営業活動を劇的に変えています。
かつて営業が足で稼いでいたような、単純な情報提供や定型的なアプローチは、テクノロジーによって自動化されつつあります。これにより、営業職の役割は、単なる「情報提供者」から、顧客の潜在的な課題を掘り起こし、AIにはできない高度な解決策を共創する「インサイト営業」へとシフトしています。
この変化は、すべての営業と「キャリアの停滞感」
2. 数字のプレッシャーと「キャリアの停滞感」
営業職は、その成果が「数字」で明確に示されるため、常にノルマ達成のプレッシャーに晒されます。
私自身、この「数字」に、ある種の虚しさを感じていました。半期ごとに目標がリセットされ、どんなに達成しても、またゼロから同じトラックを周回し続ける感覚。「この先に、自分の市場価値の向上はあるのか?」という疑問が、常にありました。
この「キャリアの停滞感」は、多くの営業職に共通する悩みです。 特に、特定の業界や製品にキャリアが固定化されやすいルート営業などでは、「この会社でしか通用しないスキルではないか」という不安が、「手に職をつけたい」という強い動機に繋がります。
第2章:なぜ「エンジニア」は魅力的な選択肢なのか?(プル要因)

一方で、エンジニアという職業そのものが持つ、客観的な「プル要因(引き寄せる力)」を見ていきましょう。
1. 圧倒的な市場需要(データが示す「売り手市場」)
まず、市場がエンジニアを圧倒的に求めています。 経済産業省の調査では、2030年には最大で約79万人のIT人材が不足すると予測されています。
この需給のアンバランスは、求人倍率に明確に表れています。dodaが発表した「転職求人倍率レポート」などを見ると、IT・通信分野の求人倍率は、他職種の平均を大きく上回り、常に10倍を超える「超・売り手市場」が続いています。
これは、「キャリアの安定性」を求める人々にとって、何より強力な魅力です。
2. スキルに直結する「年収」のポテンシャル
エンジニアの給与は、年功序列ではなく、あなたのスキルと市場価値に直結します。 国税庁の民間給与実態統計調査などを見ても、「情報通信業」の平均給与は、全業種の平均を大きく上回る傾向にあります。
未経験からの転職直後は、一時的に年収が下がるケースも確かに存在します。しかし、スキルと経験を積むことで収入は着実に上昇し、長期的には多くの営業職の収入を上回るポテンシャルを秘めています。
私の場合、社内異動だったので給与変動はありませんでしたが、その後の昇給幅は営業職時代より大きくなりました。そしてフリーランスとして独立した際は、まさに自分のスキルが市場価値に直結し、年収3倍を実現できました。これは、この業界のポテンシャルを示す一例です。
3. 「働き方」の柔軟性
エンジニアの働き方は、裁量権が大きく自由度が高いという特徴があります。特にコロナ禍以降、リモートワークの普及が最も進んだ職種の一つです。 各種調査でも、エンジニア職のリモートワーク実施率は常にトップクラスです。
ノルマや社内外の付き合いに時間を費やすことの多かった営業職にとって、働く場所や時間を柔軟に選択できるこの自律的な働き方は、ワークライフバランスを向上させる大きな魅力となります。
第3章:「営業経験」こそが、最強の転職武器である理由

では、エンジニアになるとして、なぜ「営業経験」が役に立つのか。 「技術ゼロなのに?」と思うかもしれませんが、市場はあなたの経験を「最強の武器」として評価します。
1. 採用担当者が求める「非技術的スキル」
多くのIT企業が、未経験エンジニアを採用する際、技術力以上に重視しているスキルがあります。 それは、「コミュニケーション能力」「課題解決能力」「学習意欲」です。
営業職は、まさにこれらのスキルの塊です。
- 顧客の言葉にならないニーズを掘り起こす「ヒアリング能力」
- 複雑な情報を分かりやすく伝え、合意形成を図る「プレゼン・交渉力」
- 多数の案件を管理し、目標達成に向けて計画的に行動する「プロジェクト推進能力」
これらの能力は、システム開発における最上流工程(顧客と対話し、システムの仕様を決める「要件定義」など)で不可欠なものであり、純粋な技術畑出身者にはない、営業経験者だけの圧倒的な強みとなります。
2. 営業経験が輝く「エンジニア職種」
あなたのスキルは、特に「顧客とビジネスの橋渡し」を担う職種で絶大な価値を発揮します。
- セールスエンジニア / ITコンサルタント: 
 まさに営業とエンジニアの中間職。技術的な知見を基に、顧客の課題に合わせたソリューション提案を行います。あなたの営業経験が、そのまま活かせます。
- SaaSエンジニア (Microsoft 365など):【私の体験談 3割】 
 私が専門とするMicrosoft 365(SaaS)の導入支援は、この典型です。仕事の8割は、「顧客の業務フローをヒアリングし、どの機能をどう使えば業務が改善するか」を考える、コンサルティングそのものです。プログラミング能力よりも、営業で培った課題発見能力が直接の価値になります。
- プロジェクトマネージャー / プロダクトマネージャー: 
 市場のニーズや顧客の痛みを理解し、開発チームを率いてプロダクトを成功に導く役割です。あなたの「ビジネス感覚」が、技術チームの羅針盤となります。
第4章:転職の現実と、成功への「ポジショニング」

最後に、転職の現実と、成功するために最も重要な「戦略」についてお話しします。
1. 年収変化のリアル(30代の挑戦)
30代からの未経験転職は、20代に比べ、ハードルが上がるのは事実です。企業が若手育成枠として20代を好む傾向があるためです。 また、一時的に年収が300万円台に下がる可能性もゼロではありません。
しかし、これは「どの領域を選ぶか」で大きく変わります。 そして、30代には、20代にはない「ビジネス成熟度」という武器があります。この武器を正しく提示できれば、年齢はハンディキャップになりません。
2. なぜ「ポジショニング」が全てなのか
ここで、私の意見を強く述べさせてください。 転職で成功するか否かは、あなたの「努力」以上に、「ポジショニング(戦う場所選び)」で決まります。
私がエンジニアへの転身を考えた時、世間ではWeb系開発が華やかでした。しかし、その領域はプログラミングスクール卒業生が飽和し、競争が激化していました。 一方で、私がいたM365やAzureの領域は、日本の企業の7割が導入している巨大市場にもかかわらず、専門家が圧倒的に不足していました。
私は、競争の激しいレッドオーシャンで戦うのではなく、自分の営業経験が活き、かつ競合が少ない「ブルーオーシャン(穴場)」を意図的に選びました。この戦略こそが、私のキャリアを成功させた最大の要因です。
3. 「やりがい」と「収入」のバランス
転職理由は、「収入」と「やりがい」の両輪です。 やりがいがあっても、収入が低ければ持続しません。逆に、収入が高くても、虚しさを感じては本末転倒です。
まずは、あなたの営業経験が活きる「やりがい」を感じられる領域(例えばSaaSエンジニア)を見つけ、そこで専門性を高めることで、結果として「収入」も最大化していく。 これが、最も現実的で、幸福度の高いキャリア戦略だと、私は確信しています。
結論:あなたの転職理由は、「逃げ」ではなく「戦略的進化」だ

営業 から エンジニアへのキャリアチェンジは、過去を捨てる「リセット」ではありません。 それは、あなたの貴重な営業経験を土台に、技術という新しい武器を掛け合わせ、市場価値を飛躍させる「ハイブリッド人材」へと進化する、極めて戦略的なキャリアアップです。
この記事で紹介した客観的なデータを自信に変えて、あなたの転職理由を、堂々と「最強の武器」として語ってください。
 

 
						